恵方巻からでもこんなことを考えられるんですよ、という話

 ハロウィンで軽トラをひっくり返したという話を見聞してから、「あれ、ハロウィンってそんな行事だったっけ?子供たちが近所の家を回ってお菓子もらう行事じゃなかったっけ?」と思うように。

 さらにそこから派生して「ハロウィンって最近定例の行事になってるよな~。なんでそんなことになってるんだろう」と思い、google scholarで検索をかけたところ、沓沢博行「2009]「現代人における年中行事と見出される意味―恵方巻きを事例として―」筑波大学比較民族研究会『比較民族研究』第23号、131-151ページという論文をみつけました。

 そこでこの記事では上記の論文を紹介し、あるイベントが年中行事になってしまう要因を探っていきます。

目的

   この論文の目的は、「恵方巻を事例として現代人の年中行事のあり方の考察をすること」です。

結論

恵方巻は、その普及する過程においてその時代の需要を巧みに取り入れ、変化を重ねてきた。そして現在は全国的な行事として多くの人々に受け入れられるに到っている。販売する側は、多様化する現代人の価値観に合わせ、行事に更なる価値を付加しており、恵方巻は世相に合わせ今も進化を続けているといえる。また、受け手側は提案される様々な価値を主体的に選択することが出来、それが恵方巻の普及の大きな要因となっている。一方で、節目を求める年中行事本来の意味もまた現代人には根ざしており、それも恵方巻を行う動機となっていることを指摘しておきたい。この節目の感覚については、より深く分析を加える必要があるだろう」(本文、149ページ)

 なるほど、ある物事をイベント化するには供給側のみならず、需要側がそれをある意味で自由に変化することが可能であるという条件が必要ということですな。

感想

 この論文は、恵方巻という一つの行事を事例としてそこから年中行事の意味や普及する過程の法則を導出しているわけですけど、これって恵方巻が特殊な例であるということを否定しているわけではないよなと。

 つまり、他の年中行事と分類されるものでも検証する必要があるのかなあとは思います。ただ、個人的にはこういった一つの事例で普遍性を求める帰納法は好きなので大変興味深く読めましたけどね。

 今回はこんな感じです。