仮性包茎で悩んでいる方ちょっと立ち止まってこの論文を読んでみよう、という話

今回紹介する論文は、渋谷知美[2018]「仮性包茎手術を正当化する言説の1970-90年代における変容――『医療化された男らしさ』概念を手掛かりとして――」東京経済大学人文自然科学研究会『東京経済大学人文自然科学論集』87-113ページ、所収です。

まあ、CMとかでも男性がタートルネックを着て宣伝しているものとかありますからね。包茎の方はなんとなく気になってしまうのもわからなくもないです。

ただ、そういった「漠然とした不安」というのはだいたい気苦労に終わりますからね。

今回紹介する論文はそういった不安をあおる言説を調査・考察したものです。

  結論からいいますと、

 ・時代が下るにつれ、仮性包茎手術を正当化する言説のバリエーションは増加するという仮説は妥当ではない。

 ・ただし、<フィクションとしての女性の目>を体現する言説が存在はしていた。

そしてこの結論から筆者は、

現代日本社会で起こっている『男の生きづらさ』というのは,多かれ少なかれ,このようにして発生しているのではないだろうか。男女間の問題と思われていることは,じつは家父長制下での男性と男性の間の問題であることに,私たちはもっと注意深くなるべきなのではないだろうか」(本文、112ページ)

という考察をしております。

なるほど。男性と女性の問題と考えられているものは実は、「男と男」の問題なんだと。この結論を寅さんが聞いたらびっくりかもしれませんね笑。

ちなみに、本論文は次のような研究のデザインをしております。

 ・創刊号~1999年までに刊行された『ポパイ』『ホットドッグ・プレス』のうち114記事(包茎に関する記事)を選択。

 ・雑誌記事を対象としているのは1970年代~1990年代にいたるまでインターネットが普及しておらず、そのため、ネット記事を対象外にしている。

よくやったなあ、という感じですね笑

こうなったら、2000年代以降の言説を継続して調査してもらいたいなあ。

おそらく変わっていないんでしょうけどね。「イエス、〇〇クリニック!」とかタートルネックを顔の半分くらいまでかぶった男性が踊るCMといった宣伝形態ではなく違うかたちで残って。

あと上には書いていないんですけど、他にも包茎に関する記事を書いた雑誌もちろんあるわけで、それも調査してほしいなあと思います。

今回はこんな感じです。